【吉岡諒氏監修】ナーチャリングで受注を増やす6つの手法
目次
多くの企業が、売れる仕組みづくり(=マーケティング)に取り組んでいますが、ネットやSNSの影響、好みやニーズの細分化により、従来型のマーケティング戦略だけでは追いつかない部分も増えてきています。
ナーチャリングは、そのような問題の解決策として注目を集めている手法です。
リードや既存顧客に向けて長期的にアプローチする手法で、費用対効果の高いマーケティング手法として多くの企業で採用されています。
1、ナーチャリングとは?
マーケティングの世界で注目を集めている手法の1つが「ナーチャリング」です。
ナーチャリングを英語で表記すると“Nurturing”、意味は「育成」です。
マーケティングの世界でのナーチャリングは「顧客の育成」という意味で使われています。
また、リードを既存顧客へ育成する手法を「リード(Lead)ナーチャリング」ということもあります。
今や、商品を選ぶ際、ネットやSNSを使って情報を吟味する時代になっています。
商品を売る側も、従来のように商品を購入してくれそうなリードをひたすら探すだけでは不十分です。
時にはリードの購買意欲を高めるため、継続して有益な情報を提供する必要があります。
2、ナーチャリングはすべき?育成の重要性とは
この章では、ナーチャリングを行う重要性を解説します。
(1)リード・一般顧客でナーチャリングの手段を分ける
ナーチャリングにおいて重要なのは、リードが「ほしい」と思ったタイミングに合わせて、情報を発信することです。
それぞれのリードが必要とする情報、好む情報はそのリードがどのような状況にいるかによって変化します。
そのため、リードの段階に合わせたコミュニケーションを意識することが大事です。
例えば、タッチポイントを持ったばかりのリードと、自社の商品を一度購入したことがある既存顧客を分けて考えることで、より精度の高いナーチャリングのシナリオを設計することができるでしょう。
なお、本記事では各用語を以下の通り定義します。
- リード(見込み顧客)…自社と接点があるが商品未購入の見込み顧客
- 一般顧客…自社の商品を一度購入したことがある顧客
- 優良顧客…自社の商品を継続的に購入している顧客。LTV(顧客1人、または1社から得られる総売上高)が高く、自社にとって貢献度が特に高い
- 既存顧客…一般顧客+優良顧客
(2)一般顧客のナーチャリング
まずは一般顧客のナーチャリングの重要性と具体的な手段についてご説明します。
①一般顧客のナーチャリングの重要性
ナーチャリングには、リードを一般顧客へ育成する手法と、一般顧客を優良顧客へ育成する手法の2パターンがあります。
消費者のニーズが多様化している現在、商品や会社の認知獲得だけではなかなか購買までつながりません。
リードに対して継続的に情報提供を行い、リードを自社の「一般顧客」へと「育成する」必要に迫られています。
しかし、リードを一般顧客へと育成する前提として、まずはリード獲得が必要です。
リード獲得をするためには認知の獲得が必要になり、マーケティング業務の工数も増えてしまいます。
そこで売上を伸ばすために優先すべきなのが、「一般顧客」へのナーチャリングです。
マーケティングの世界で有名な「1:5の法則」をご存じでしょうか。「1:5の法則」とは、「新規顧客へ商品を販売するためにかかるコストは既存顧客への販売の5倍かかる」というもの。
まだ商品を購入するかどうか迷っているリードよりも、1度商品を購入したことのある既存顧客にアプローチした方が、購買意欲が高いので効率的です。
②一般顧客のナーチャリング手段
一般顧客へのナーチャリングは、継続的なアプローチが主となります。
具体的な手段としては、SNSやメルマガ、ダイレクトメール、インサイドセールス、セミナーなどを駆使し、一般顧客に対しての継続的な情報発信を行うことです。
一般顧客の潜在的なニーズへ働きかけることはもちろん、自社の存在を忘れさせないためにも重要です。
3、ナーチャリングの3つのメリット
ナーチャリングで得られるメリットを3つご紹介します。
(1)長期的な顧客対応をシステム化できる
BtoB向け商品の場合、利害関係者が多いため合意形成に時間が必要だったり、予算確保に年単位の期間がかかるなど、購入までの期間が長期にわたる傾向があります。
そのため、売り手側もこまめにアプローチする必要があります。
ナーチャリングは顧客へのアプローチを継続的な「線」として対応する手法です。アプローチ施策を一度システム化してしまえば、そのまま長期的に運用することができます。
そのため、コストをかけずに効果的なアプローチを模索できるでしょう。
(2)営業活動を効率化できる
既存顧客へのナーチャリングでは、商品の認知のための広告出稿やテレアポ、飛び込み営業といった広告費や時間のコストをかける必要がありません。
既に持っている顧客リストの連絡先に対して、適切な手法とタイミングで情報発信をするだけなので、営業活動の効率化が図れます。
さらに、情報発信ツールはSNSやメルマガ、自社のWeb媒体が中心となるため、広告費をかけずに発信することができます。
(3)信頼を築くことができる
継続的なアプローチを続けることで、顧客との信頼関係を築くことができます。
顧客側も商品の選択に手間と時間をかける以上、十分に信頼できると判断できなければ、商品やサービスを購入しません。
一般顧客に信頼してもらうためには、長期的に商品の魅力を訴求する必要があるでしょう。一般顧客の潜在的なニーズを分析し、タイミングを見極めて情報発信を行うことが効果的です。
ナーチャリングを行い、一般顧客を優良顧客へと育てましょう。
4、ナーチャリングのための具体的な6つの手法を紹介
ナーチャリングで実際に運用する手法のうち、代表的な手法を6つご紹介します。
それぞれの特徴や機能を理解し、自社のサービスや顧客の属性に合わせて複合的に運用することが大事です。
(1)メルマガ
Web広告の黎明期から活用されている「メルマガ」ですが、実は既存顧客へのナーチャリングに向いた手法です。
メルマガは、顧客にとって興味のある情報やコンテンツを定期的に届けるためのツールなので、顧客側も気軽に登録する傾向があります。
一斉配信によって、コストをかけずに多くの顧客へ向けて情報発信することができる点も強みです。
クリック率や開封率、配信時間、タイトルの良し悪しなど、効果測定がしやすいため、施策の改善も図りやすいです。
顧客に合わせたメルマガの配信方法を検討中の方は『マーケティングオートメーションで何ができる?効率的な営業を実現するために知っておきたいこと』も併せてご覧ください。
(2)DM(ダイレクトメール)
顧客に対して手紙で直接自社の商品やサービスを売り込む手法です。
見ず知らずの相手からのDMだと嫌がられてしまいますが、一度利用した商品やサービスの会社からのDMだと開封率は上がります。
ただ、むやみやたらにDMを送ってはいけません。一般顧客の自社に対するイメージが悪くなってしまう恐れがあります。
顧客のニーズ、属性に合わせて、適切なタイミングで商品やサービスを紹介しましょう。
さらに、購入特典や割引の情報などを同封し、顧客にとってのお得感を演出することも効果的です。蓄積した顧客データを生かし、顧客のニーズを満たす情報を提供できるかどうかが成功の鍵となります。
(3)ホワイトペーパー
いわゆる「ノウハウ」や「導入事例レポート」など、自社の商品やサービスに関する様々な情報をまとめた資料のことを指します。
日本語で「白書」のことで、もともとは政府機関などが公式に発行する年次報告書などをこのように呼んでいましたが、現在ではビジネス用のマーケティングコンテンツとして活用されています。
他の手法と比べてコンテンツの制作コストはかかりますが、有益な情報を提供することで信頼性が増します。
ホワイトペーパー制作のコツについて知りたい方は『【高橋舞伎氏監修】ホワイトペーパーで効率的にリード〜受注までつなげる極意と制作方法を大公開!』も併せてご覧ください。
(4)SNS
SNSは、顧客へのアプローチツールとしてもはや欠かせないものとなりました。しかし、顧客の属性や商品の特性に合わせて最適なSNSツールを選ぶ必要があります。
例えば、Facebookのメインユーザーは40代〜50代の男性なので、ターゲット企業の担当者が40代〜50代の男性の場合にオススメです。
このように、ユーザーの属性ごとに手法や選ぶべきSNSが違うので、自社のターゲットに合ったSNSを戦略的に選ばなければなりません。
なお、これからのSNSで必須とも言えるツールはLINEです。
LINEは国内最大のユーザー数を誇るSNSで、顧客へダイレクトに情報を届けられるツールとして非常に優れています。どれから手を付けるべきか悩んでいる場合は、まずはLINEマーケティングから着手することがおすすめです。
(5)セミナー/ウェビナー
セミナーは対面でのコミュニケーションによってナーチャリングを行う手法です。
これまでは顧客に足を運んでもらう必要がありましたが、コロナ禍の影響でウェビナースタイルの需要が伸びました。
セミナー/ウェビナーは、より情報を細かく伝えることができるため、購買へとつながる可能性が高い手法です。
SNSやメール、オウンドメディアで告知をしつつ、セミナー/ウェビナーに参加するメリットを感じてもらえるような設計を整えておく必要があるでしょう。
ウェビナーについて知りたい方は『ウェビナーとは?基礎から成功のコツまで徹底解説』も併せてご覧ください。
(6)コンテンツマーケティング
企業のHPなどで運営するオウンドメディアなどのコンテンツによる集客方法です。専門的な情報を分かりやすく発信することで、自社の認知度や価値を高める効果があります。
ただし、コンテンツマーケティングで集客するためには、SEO知識や専門性を持ったライターの確保などが必要な上に、成果が上がるまで時間がかかることがほとんどです。
SNSやメルマガと連動させ、情報提供ツールの1つとして活用すると効果的でしょう。
SEOについて知りたい方は『SEOとは何か?初心者でも分かる認知拡大の基本と具体的な施策』も併せてご覧ください。
5、ナーチャリングで受注につなげる具体的事例
ナーチャリングの秘訣は、ターゲットに「商品やサービスを実際に利用したかのように擬似体験をしてもらうこと」です。
そのために有効な施策は事例×動画×SNSです。
事例インタビューを動画にしてYouTubeにアップしてSNS(FacebookやTwitter等)やメールで配信します。
ナーチャリングを目的とする事例インタビュー動画で重要になるのは、いかに見込み顧客の共感や疑似体験を生み出し、態度変容を促してニーズを顕在化できるかです。
今回は、M&Aをしたい見込み顧客をナーチャリングするための事例インタビュー動画(※)を例にご紹介します。
事例インタビュー動画の中では、以下のような要素を伝えていきます。
- 会社をM&Aしようと思ったきっかけ
- M&A仲介企業の探し方
- 買い手候補企業選定でこだわったこと
- 買い手探しで気をつけたこと
- M&A決定後の社員の反応
- デューデリジェンスなどで上がった課題はあったか
- M&A成功の要因
上記事例では、まだ会社を売りたいと考えていなくても、動画を見て自分が会社を売却する流れを擬似体験することで、見込み顧客に関して「まだ会社を売る気はないけど、いくらくらいなのかプロに軽く話を聞いてみても良いかな」と態度変容を促しています。
事例インタビュー動画でナーチャリングを行う際には、以下の内容をヒアリングして収録・編集することがおすすめです。
- 商品やサービスに出会ったきっかけ
- 商品やサービスを利用しようと思ったきっかけ
- 商品やサービスを利用してよかったこと
- 商品やサービスを他の企業にもおすすめしたいか
ナーチャリングにはメールマーケティングやホワイトペーパーなど様々な手法があります。事例×動画×SNSもナーチャリングの手法の1つであり、とても有効な方法です。
6、ナーチャリングを進めて受注につなげよう!
ナーチャリングはリードや既存顧客に対して、継続的なアプローチを行い購買意欲を高めてもらう手法です。
新たなターゲット層へのアピールのために広告コストをかける必要がないため、費用対効果の良い手法と言えるでしょう。
DMMオンライン展示会では、低コストでリード獲得ができるオンライン展示会を開催しています。ぜひ一度、出展をご検討ください。
【ポート社過去最大のM&A】あのディールの売り手はすごい方でした|Vol.593【INE・伊藤圭二代表①】
【売り手の気持ち】ポート社の子会社化を振り返って…|Vol.594【INE・伊藤圭二代表②】
この記事の監修者
吉岡 諒
監修者
株式会社ウィルゲート 専務取締役COO・共同創業者
1986年岡山生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。代表取締役小島と共に2006年に株式会社ウィルゲートを設立。個人として累計で3,000社のWebマーケティングの課題解決提案を実施。
2012年に記事作成「サグーワークス」、2014年にメディア「暮らしニスタ」、2018年にはSEOのAIツール「TACT SEO」、2019年にはオンラインで編集チームが作れる「エディトル」、M&A仲介支援サービス「Willgate M&A」をリリース。
2021年はSNSを活用した営業支援「ソーシャルセリング」を開始。COOとして全サービスの管掌役員を務める。