オンラインとオフラインどっちがいい?コロナによる顧客意識と集客手法の変化【いいたかゆうた氏×今井晶也氏 対談前編】

オンラインとオフラインどっちがいい?コロナによる顧客意識と集客手法の変化【いいたかゆうた氏×今井晶也氏 対談前編】

新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)(以下略、コロナ)の流行をきっかけに顧客の意識やマーケティング施策は大きく変化しました。この変化を私たちはどう捉え、コンテンツを考えていけば良いのでしょう?

再現性の高いSNSマーケティング支援サービスを提供する株式会社ホットリンクで2019年から約3年半執行役員CMOを務め、2022年7月に株式会社GifXを創業したいいたか ゆうた氏と、営業支援のトップランナーである株式会社セレブリックスの執行役員CMOの今井 晶也氏に、経験談や事例を交えながら語っていただきます。


【後編はこちら】顧客にとって“良いコンテンツ”とは?コンテンツマーケティングの「これから」を考察

オンラインとオフラインのハイブリッド施策が、今後のスタンダードになる

司会:
コロナの流行初期から現在までにおける、貴社のターゲット層の意識の変化をどう感じているか教えてください。

いいたか:
そうですね、まず前提から話すと、コロナによってビジネスサイドで大きく変わったこととして、オフラインがオンラインになったことが挙げられますよね。シンプルだけどこれはめちゃくちゃ大きな変化。だってコロナ以前は、オンラインイベントをやっても全然人が集まりませんでした。

あと実は私、リモートワーク反対派だったんですよ。絶対に仕事は会社ですべきだっていう、年齢の割に逆行しているタイプで(笑)。コロナ禍を経てリモートでも働けるんだなと自分の中でのポジティブな気づきがありました。


今井:
意外ですね!見た目は完全に家の近くのカフェとかに居そうなのに(笑)。


いいたか:
あはは(笑)。あと実体験として、オンラインの商談で年間5,000万円クラスの案件が契約になったり、何ならその後もリアルで会わないままでいるお客さんが普通にいるんですよ。…そういうところが、まずコロナによる変化としては大きいですかね。

さらにターゲット層の行動の変化でいうと、コロナの流行初期はオンラインでの集客が凄くしやすかったです。前職のホットリンクでは、2020年のコロナ第一波のタイミングでウェビナーを週2~3回のペースで開催していたんですが、毎回200~300人は参加者が集まりました。


今井:
へー、それはすごいな。


いいたか:
ただ、結果として、人は集まっても有効商談数は増えていなかったし、契約数も母数の割に増えなかったんですよね。参加率も最初の3かヶ月は85%ぐらいあったんですが、toBだと今や70~60%ぐらいまでに下がっているんですよ。

要は、ウェビナーに慣れたことで「便利だけど面倒臭い」という意識の変化が起きたんだなと。さらに言うと「ながら視聴」で仕事をサボる理由になってるみたいなところも、変化として大きいのかなと捉えています。


今井:
営業の世界でもオフラインからオンラインという変化が起きましたね。さらに言うと、インサイドセールスっていう文脈やイベントって文脈にも置き換えて話せるぐらい、オンラインが日常的になりました。

ただそこで私たちが自覚しておかなければいけないのが、もはやアフターコロナというビックワードで、いろんなことを一括りにはできないってことです。アフターコロナとして想像する世界がコロナ直後なのか、または1年後・2年後なのかによって、見えている景色はかなり違ってきます。そのためアフターコロナという言葉に振り回されず、健全な疑いの目を持っていた方が良いですね。


いいたか:
本当にそうですよね。


今井:
基本的にはハイブリッドというか、オンラインとオフラインがブレンド化されていくことがこれからのスタンダードになるのではないかと思います。

というのも、セレブリックスではコロナ以降にオンライン展示会への協賛を募る営業をしていたのですが、「オンラインに出す金額はこれくらいにして、あとはオフラインのイベントに出資したい」という企業さんが一定数いたんですよ。

理由としては、先ほどのいいたかさんのお話にあったように、オンラインだととりあえず見てみようという参加者が多いのですが、オフラインの場合はスケジュールをブロックする必要があるので、購買意欲の高い人が集まる傾向があるからなんですよね。だから企業側も、広く多くの方々に露出をして認知を獲得するためにはオンラインイベント、購買意欲が高い方の案件を作るためにはオフラインイベントと、目的別にどうお金を使うのかが分かれてきているのが今の状況かなと感じています。


いいたか:
あと、“アフターコロナ”っていう言葉自体が終わりじゃないですか。2年以上続いた以上、世の中はもう以前には戻らない。今井さんが言ったように、オンラインとオフラインがハイブリットになったら僕もめちゃめちゃ良いと思っています。

というのもコロナ以前はBtoBでも、機能的価値で購買する人より、情緒的価値で購買していた人が多かったと僕は思うんですよ。


今井:
そうですね、わかります。


いいたか:
人に頼るところが強かったのが、オンラインに移行したことで人と会うことがなくなり、機能的価値で購買するようになった。ですが正直なところ、競合するツールにそこまで機能的な差は無いので、今後はまた情緒的価値で購買することが増えていくんじゃないかと思います。

例えば機能的なところはオンラインで伝えて、信頼性を担保するようなところはオフラインと、ハイブリットに棲み分けるのが良いと思います。それこそ、ご飯に行くとかは絶対復活するべきで、そういうところはコロナ前のように戻ってくるんだろうなという感覚が、僕の中で強くあります。

数のロジックに惑わされるな。施策の目的を明確にして戦略的に顧客を取り込もう

司会:
コロナ禍の中で実際にやってみた施策と、そこから見えてきたことを教えていただきたいです。


いいたか:
まず僕は2020年の4月に「#NEWWORLD2020」というオンラインイベントを開催しました。これは僕自身が「コロナで世界は変わったけど、自分たちはどう適合すればいいのか」と不安を感じていたところからの企画で。実際どうなのかを尊敬する人たちに質問してみようと考え、イベントにしたものでした。ところが告知をすると5,000人くらいの応募があり、開催中の1週間で6,500ものUGCがあったんです。異常でしょ?(笑)。


今井:
すごい数字ですね!!!


いいたか:
ただ、「#NEWWORLD2020」をやってみて得たのは、ウェビナーって便利だし人も集まるけれど、蓋を開けたら有効リードはないという現実でした。そこから僕は、イベントを開くときはたとえ集客が少なくなっても、参加者が聞きたい内容をテーマに落とし込むべきだという考えに至りましたね。

マーケターって数字に騙されがちですが、「月間で〇千人集客した方法」などのテーマや記事に踊らされないでください。だって毎日ウェビナー開いて100人ずつ集めたら、余裕で20営業日で2,000人になるわけじゃないですか。なので、数の定義と質の定義を同時に考えないと落とし穴にはまります。

さっき今井さんも「認知を目的にするのか、それとも購買を目的にするのか」とおっしゃっていましたが、これってイベントに限らず全てのコンテンツに共通する話ですよね。


今井:
セレブリックスの場合ですと、弊社は営業支援の世界では珍しくコンテンツメーカーと認知されています。でもこれは結果論で、門外不出の営業レシピだと以前は隠していたんですよ。でもこの時代、突き詰めればどこも言っていることは同じ…となれば、コロナで皆が困っている今、隠すよりオープンにしたほうがカッコいいんじゃないかと方針を変えたわけです。

そして、コロナの中で弊社はイベントを積極的に開催しました。かつイベントを
・ブランディングイベント
・マーケティングイベント
・セリングイベント
の3つに分類して取り組んでいきました。

ブランディングイベントは、リードや顧客情報を得ることに拘らず、顧客に役立つ情報を伝えることで、顧客が困ったときにセレブリックスを最初に想起してもらうための活動支援として位置付けたイベントです。次にマーケティングイベントは、主に新規リードを獲得するか、獲得したリードをホットにすることを目的にしたイベント。そしてセリングイベントは、商談や案件を作るためのイベント、という位置付けです。

ただ、いきなり何処の馬の骨かもわからない人間が、商談や案件を作るセリングイベントをしても「誰だお前?」となりますので、最初の1年間は、ブランディングイベントとマーケティングイベントのみに絞り、また商品説明も基本的に禁止と振り切りました。参加者に役立つ情報発信に徹するのを1年間やったんです。

決して数が多いから良いわけではありませんが、昨年度は1年間で14,000件ほどの集客に成功し、かつ指名検索がすごく増えましたね。元々セレブリックスって、コロナ前は月100件、指名検索されているかどうかでした。しかも、100件のうち5件は私の検索だったので(笑)。


いいたか:
あはははは!それブックマークしとけばいいんじゃない?(笑)。


今井:
リテラシーが低いんで、毎回検索してました(笑)。
…まあでも、100件だったのが今では月7,000件くらいの指名検索になっているんですよね。そうするとSNSを通してでもやはり月に数件は、直接セレブリックスに相談したいとお問い合わせいただくようになりまして。

これってすごく健全で、変に価格競争に巻き込まれないので、本当にお客様の課題解決に必要な提案ができるようになるんですね。
また、イベントをしたからといって即商談にはなりませんが、企業が依頼先を選ぶときに、色々なイベントで情報提供しているセレブリックスに発注したいという気持ちになってくれている。その影響も新しい発見でしたね。


いいたか:
いやあ、本当にそうですね。じゃあ指名検索に絡んで僕の方から事例をもう1つ。

僕はSNS畑にいた人間なので、SNSでリアルな口コミがされると指名検索が増えるのは、1冊目の著作『僕らはSNSでモノを買う』でもはっきりと伝えています。この本では紹介していない話として、ホットリンクのメディアリレーションの事例があります。

何をやったかというと、2019年にホットリンクに入社したときに、自分から複数のメディアさんに企画を持っていったんです。それで半年間で30本ほどメディア露出に成功しました。最初の3か月で6本くらいメディアに出たのですが、その時点で、月間200件程だったホットリンクのSNS言及数が1,500件くらいまで上がったんですよ。

そもそもメディアリレーションの目的は、興味喚起からのSNSフォローやメルマガ登録など、顧客にまず「接点」を持ってもらうことだったんですね。僕自身がメディアに出てコンテンツになることで、自分を顧客にディストリビューションして接点を増やし、次は僕らの事例をテーマにSNSやメルマガで発信していくことで、どんどん顧客を引き込んでいくことができる。ホットリンクはこの手法で、広告費を変えずに有効リードを引き上げることを実践していたんです。今井さんの3種類のイベント開催の話は、これとめちゃめちゃ似ているなと思います。

イベントをやっている企業が多いからといって、右に倣えでイベントをやれば商談が取れるかというと、そんなには甘くない。そこを、この記事を読んだ方には理解していただきたいな。繰り返しになりますが、施策の目的が「認知」なのか「商談獲得」なのかを明確にした上で、コンテンツの設計を考えるべきですね。

【後編】顧客にとって“良いコンテンツ”とは?コンテンツマーケティングの「これから」を考察

オンライン・オフラインを組み合わせたハイブリッドな施策が今後のスタンダードになると事例を交えてお話いただいた対談前編。後編では、良いコンテンツの作り方や今後のマーケティングの主流となるセオリーについて、【株式会社GiftX Co-Founder いいたか ゆうた氏】と【株式会社セレブリックス 執行役員 CMO 今井 晶也氏】が自身の経験をもとに語り合います。

監修者画像

株式会社GiftX
Co-Founder

いいたか ゆうた

株式会社GiftX Co-Founder
2014年4月にWebマーケティングメディア「ferret」の創刊編集長として株式会社ベーシックに入社し、2017年に執行役員就任。2019年1月に株式会社ホットリンクに入社し、執行役員CMOに就任。2022年7月に「ひとの温かみを宿した進化を。」をテーマに株式会社GiftXを共同創業。これまでに100社以上のコンサルティングを経験。
自著:「僕らはSNSでモノを買う」、「BtoBマーケティングの基礎知識」、「アスリートのためのソーシャルメディア活用術
Twitter:@yutaiitaka

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株式会社セレブリックス
執行役員 CMO

今井 晶也

株式会社セレブリックス セールスカンパニー 
執行役員 カンパニーCMO /セールスエバンジェリスト
セールスエバンジェリストとして、法人営業に関する研究、執筆、基調講演等を全国で行う。
2021年8月には自著を扶桑社より出版。営業本のベストセラーとして半年で7刷となる重版が決定。 現在は執行役員 CMOとして、セールスカンパニーのマーケティング、営業、新規事業、事業推進を管掌する。
Everything DiSC®️の認定トレーナーであり、専門は営業、プレゼンテーション、コミュニケーションスタイルと多岐に渡る。
自著:「Sales is 科学的に成果をコントロールする営業術」、「お客様が教えてくれた「されたい」営業
Twitter:@M_imai_CEREBRIX

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