顧客にとって“良いコンテンツ”とは?コンテンツマーケティングの「これから」を考察【いいたかゆうた氏×今井晶也氏 対談後編】

顧客にとって“良いコンテンツ”とは?コンテンツマーケティングの「これから」を考察【いいたかゆうた氏×今井晶也氏 対談後編】

新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)(以下略、コロナ)の大流行をきっかけに顧客の意識やマーケティング施策は大きく変化しました。この変化を私たちはどう捉え、コンテンツを考えてゆけば良いのでしょう?

オンライン・オフラインを組み合わせたハイブリッドな施策がスタンダードになると事例を交えてお話しいただいた対談前編
後編では、良いコンテンツの作り方や、今後のマーケティングのセオリーについて、株式会社ホットリンクに執行役員CMOとして勤めていた【株式会社GiftX Co-Founder いいたか ゆうた氏】【株式会社セレブリックス 執行役員 CMO 今井 晶也氏】が語り合います。


【前編はこちら】オンラインとオフラインどっちがいい?コロナによる顧客意識と集客手法の変化

「ダセェことすんな、派手にやれ!」の意気で、自分がやりたいコンテンツを作る

司会:
対談前編で「役立つコンテンツ」を作って発信していかないと、指名検索やリーチ獲得につながらないという話がお二方からございました。そこで「役立つコンテンツ」を作るには、具体的にどうしたら良いのか教えてください。


いいたか:
そうですね。まず誰にとって役立つコンテンツなのかを、ちゃんとイメージすることですかね。

例えば記事系のコンテンツだと、多くの人はコンテンツSEOを頑張ろうとするじゃないですか。でもコンテンツSEOってニーズが顕在化されているからこそなので、トラフィックの総量が多いからコンバージョンが出てると錯覚しちゃうんですよ。実際にビッグキーワードで上位表示されてもコンバージョンにはつながらないってケースがあります。それは上位表示が目的になってしまい、そのキーワードで検索するユーザーの何のどんな問題を解決したいのかが欠落してしまっているんですよね。

例えば「ディストリビューションとは」で記事を書くなら、このキーワードを検索する人が、なぜこれを調べているかってことを想像してください。そうしたら「おそらく打ち合わせの場で出たけど、言葉も定義もわからなかったんだろう」「この言葉が出たってことは、SNS広告の打ち合わせだったんだろう」というところに思いが至ると、ディストリビューションを交えたSNSマーケティング関連の記事を書くとコンバージョンしやすい、とか。このように考えてコンテンツを作っていくと、ターゲットに「役立つコンテンツ」=「良いコンテンツ」を作ることができます。

あとはイベントの良し悪しは、ブランディングイベントの場合、お客さんが「面白かった!」と思えることが良いイベント。またマーケティングイベントだと、ツール選定が参加者の目的なので、ツールを理解してもらうために事例を集めて紹介する方が良いイベントになりますね。さらにセリングイベントだと、商品の情緒的価値をどれだけ伝えられるかが良し悪しにつながるのかなと思います。


今井:
いいたかさんの今の話、すごく勉強になりました! 正直私は、いいたかさんほど難しく考えていません。ただしイベントに限らずメルマガやホワイトペーパーなども含めコンテンツを作るときには、先の視点を持つことを大事にしています。提供するコンテンツを見た人のその先に役に立っているかどうかを考えていますね。

だから、私はタイトル釣りが凄く嫌いなんですよ。だって誠実じゃないから。タイトルを工夫するのは大事ですが、とりあえず「コロナ」とか「DX」とか書いておけばいいってもんじゃない。実際にこのコンテンツで何を得られるのかを、言葉を研ぎ澄ませて表現することが大切だと考えています。私の信念は「ダセェことすんな、派手にやれ!」なんで(笑)。「たった2~3件のクリックのために、ダセェことをするべきじゃない」とは思いますね。

この考えを基に作っているセレブリックスのメルマガは、タイトルの評判が結構良くてですね。クリック率が良いものだと30%くらいになっているので、愛されているコンテンツになっている実感があります。

いいたか:
僕の考えも今井さんとすごく近いです。僕もメルマガのタイトルって結構チェックしているんだけど、中身を読んで「ハイハイ」ってがっかりすることが多いです。

ちなみにホットリンクのメルマガは開封率が基本30%くらいでした。


今井:
すっご!!! セレブリックスで「良くて30%」とか言っていたのが恥ずかしくなってきたじゃないですか(笑)。


いいたか:
あはは(笑)。いやね、ホットリンクはメルマガの原点に帰ったんですよ。本来メールって1:1のコミュニケーションツール。それが1:nになったのがメルマガだから「要は開封率が高くなるメルマガを作れば良いんだろう」と。ホットリンクが当時やったのが、メルマガでしか読めない、SNSについて学べる連続小説や、「なぜ僕はビジュアル系バンドからホットリンクに入社したのか」みたいなタイトルのスタッフ紹介です。これが結果どうだったかというと、めちゃめちゃUGCで出たんですよ。あまりの好評に、BtoB企業なのにメルマガ購読ボタンをつけたほどです。


今井:
確かにホットリンクのメルマガは面白かった。何度クリックしたかわかりません。


いいたか:
だから良いコンテンツを考えるときって、「自分はどれを読みたいと思うだろう?どのイベントに参加したいと思うだろう」と原点に帰ると良いですね。それが企業のコンテンツになるとなぜか「どうしたら反応がもらえるんだろうか」って思考に行き過ぎてしまうんですよね。


今井:
今日の対談の本質というかゴールはそこですね。究極は、自分の見たいコンテンツをどう作るか。さらに言えば、コンテンツの良し悪しの判断力を持ってる人が自分の見たいコンテンツについて考えられるかどうかが全てかと。

実はセレブリックスでは、コロナ禍前の2018〜2019年に自社のマーケティング活動に本気で取り組んだのですが、そのときに社内のマーケターに2か月の自由行動期間を与えました。成果は求めずに、この間にいろんな人と人脈を作ったり、たくさんのイベントやコンテンツに触れて感覚を研ぎ澄ませることだけをやらせたんですね。コンテンツの良し悪しの判断力を養うために。これだけがというわけではありませんが、今のセレブリックスがある、大きな成功要因のひとつだと思います。

ひとの温かみを宿した進化を考えることが、新たなセオリーを生み出す

司会:
コロナの世界的流行を経て、今後のマーケティングや営業における「セオリー」はどのようなものになるとお考えでしょうか?


今井:
営業は、人も含めてしばらくは良いコンテンツを作れる人が勝つだろうなという気がしています。ジャンクなコンテンツではなく、お客さまにとって役立つコンテンツを提供し続けられる人が勝つかなと。

対談前編で、ウェビナーを「ながら視聴」する人が多いと話がありましたよね。実はオンライン商談でも、70%ぐらいの人たちが「商談中に別の仕事をしていた」というアンケート結果があるんです。さらにその内18%は「必ずする」と回答しているんですよ。

だからこそ、お客さまが画面に集中してしまうオンラインコンテンツを作れる人が勝つと思います。マーケティングはコンテンツが重要だと言われるのは昔からですが、営業こそコンテンツで差がつく時代になるし、実は営業が一番、良いオリジナルコンテンツネタを持っているんだってことを自覚した方がいいぞ、というのはこの記事で伝えたいメッセージですね。


いいたか:
それ、わかりますね。


今井:
お客さまの困りごとっていうのは、コンテンツの題材になります。お客さま自身の言葉で困りごとを聞けている営業こそ、一番コンテンツの種やネタを持っています。そこをマーケティングチームだったりが、もっと拾ってあげられる環境があったりするといいんじゃないかと思います。


いいたか:
マーケティング・営業の新たなセオリーってところでちょっと話すと、この対談の数日前にホットリンクを退社して新しい会社を立ち上げ、「ひとの温かみを宿した進化」というテーマにしています。何かというと、オンラインが加速したことで人間の関係性が失われた。僕はここに血を通わせたいんです。

対談前編でも話しましたが、これまで人が大事にしていた、ビジネスの情緒的な部分がコロナ禍で多く失われてしまった。それが元に戻ることはないだろうけれど、オンラインとオフラインがくっついた今の状態の中で「ひとの温かみってどこに存在するんだろうね?」みたいなところに、僕はヒントがあると思っていて。

DXもユーザー体験といいつつ、ユーザーの気持ちや感情を無視して機能的なシステムを作ってしまっているケースが多いですよね。自分の子供が熱を出した時、病院のサイトに訪れてチャットbotとやりとりするのが、本当に良いユーザー体験ですか?って話ですよね。そうじゃない、今すぐ、医師や看護師なりに電話に出てほしいわけです。

だから今後、100%ではないにしろ、より課題を持っている人に対してはリアルや接触型の温かみのあるマーケティングが戻ってくるんじゃないかと思っています。


今井:
セオリーと言えるかどうかわからないですが、今のいいたかさんのお話を聞いて思ったのが、これからやっぱりどの分野も、デジタル化していく仕事と、ひとの温もりが残り続ける仕事に別れていくじゃないですか。

そうなったときに、マーケティングもセールスも、デジタル化していく判断軸は、お客さま側が煩わしいと思うことなんだろうなと。売り手側でなく、お客さまが煩わしいと思うことです。

マーケティングオートメーションが流行りとしてありますが、あれは営業が営業したい時にアプローチするためのツールではなく、お客さまが忙しい時に「いちいち電話してくるな!」という煩わしさを無くすことができるツールだと考えた方が良いと思うんです。

先ほどいいたかさんが病院のサイトの例を挙げて「緊急時は電話に出てほしい」と話していたように、人ってわがままなので、困っている時は今すぐ営業してほしいんですよね。営業されることが嫌なんじゃなくて、自分にとって都合の悪いタイミングで営業されるのが嫌なだけで。

そういう意味で、お客さまの煩わしさを無くしていくことが、デジタルと人間の関係や向き合い方の今後のセオリーにつながっていくんではないかと思います。


いいたか:
タイミング次第で商談のスピードが上がるのはホントありますよね。
僕はよく「良いマーケターってどういうマーケターですか?」という質問をされるんですけど、前提を疑い続けるマーケターが一番良いんじゃないかと思います。誰にでも合うツールやフレームワークなんて、この世にあるわけがないんですよ。引き出しを持っていることは必要ですが、フレームにはまって考えすぎるのは、その人の進化を止めるという恐怖の一面も持っています。


今井:
答えを求めて、そのやり方をそのままトレースしようとすると、元々の背景が違うから上手くいかなかったりしますよね。繰り返しになりますが、前提を疑い続け、事象の背景をちゃんと理解して、自分で判断する感性を養うことが大事ですね。あとは「ダセェことすんな、派手にやれ!」の意気で、自分が面白いと思うことを信じてください。


いいたか:
いいですね、もうこの対談のタイトル決まりましたね(笑)。


今井:
いやいやこちらこそ、良いお話をたくさんありがとうございました。

【前編】オンラインとオフラインどっちがいい?コロナによる顧客意識と集客手法の変化

コロナの流行により大きく変化した顧客の意識に対し、私たちはどのような施策を行っていけば良いのでしょう?オンライン化が進む中、人と人との関係構築を目指す【株式会社GiftX Co-Founder いいたか ゆうた氏】と、営業支援のトップランナーである【株式会社セレブリックス 執行役員 CMO 今井 晶也氏】に対談いただきました。

監修者画像

株式会社GiftX
Co-Founder

いいたか ゆうた

株式会社GiftX Co-Founder
2014年4月にWebマーケティングメディア「ferret」の創刊編集長として株式会社ベーシックに入社し、2017年に執行役員就任。2019年1月に株式会社ホットリンクに入社し、執行役員CMOに就任。2022年7月に「ひとの温かみを宿した進化を。」をテーマに株式会社GiftXを共同創業。これまでに100社以上のコンサルティングを経験。
自著:「僕らはSNSでモノを買う」、「BtoBマーケティングの基礎知識」、「アスリートのためのソーシャルメディア活用術
Twitter:@yutaiitaka

監修者画像

株式会社セレブリックス
執行役員 CMO

今井 晶也

株式会社セレブリックス セールスカンパニー
執行役員 カンパニーCMO /セールスエバンジェリスト
セールスエバンジェリストとして、法人営業に関する研究、執筆、基調講演等を全国で行う。
2021年8月には自著を扶桑社より出版。営業本のベストセラーとして半年で7刷となる重版が決定。 現在は執行役員 CMOとして、セールスカンパニーのマーケティング、営業、新規事業、事業推進を管掌する。
Everything DiSC®️の認定トレーナーであり、専門は営業、プレゼンテーション、コミュニケーションスタイルと多岐に渡る。
自著:「Sales is 科学的に成果をコントロールする営業術」、「お客様が教えてくれた「されたい」営業

Twitter:@M_imai_CEREBRIX

出展募集中の展示会