新規事業立ち上げ期における効果的なマーケティング施策とは?【山中思温氏×栗原康太氏 対談後編】

新規事業立ち上げ期における効果的なマーケティング施策とは?【山中思温氏×栗原康太氏 対談後編】

市場調査を通じた大手企業の新規事業支援の経験が豊富な【株式会社まーけっち 代表取締役 山中 思温氏】と、BtoBマーケティング支援を行う【株式会社才流 代表取締役社長 栗原 康太氏】が対談。ご自身の体験をもとに、新規事業においてのマーケティング戦略や施策の見極め方について語っていただきます。


【前編はこちら】成功する新規事業は立ち上げ期の人事採用と顧客理解がポイント!

施策にこだわらず、まずは検証できるPMF(プロダクトマーケットフィット)を作る

司会:
大手企業のマーケターが新規事業立ち上げのフェーズでマーケティング施策を考えるとき、取り組むべきことはなんでしょうか?

栗原:
まずは色々な施策をやってみて、効果を分析するのが良いと思います。弊社では現在いくつかの上場企業の新規事業でマーケティングの立ち上げサポートをしているのですが、広告からLP、展示会、セミナーと色々な施策に取り組むことを提案しています。なぜかというと、すでに売上が100億あるような事業ですとデータ分析からやるべき打ち手がわかるのですが、新規事業は参照できるデータがないからです。

まずは複数の媒体で広告を出稿し、訴求するメッセージも複数個試してみる。実際にリード獲得や商談、受注・失注を経験する中で、自社の顧客は誰なのか、顧客は何を課題に感じているのか、などを検証するのが大切です。

ただし、上場企業ですと、色々な施策をやるのは稟議申請の関係上、ハードルが高い場合があります。東証グロース市場のベンチャー企業や中小企業では受け入れられる進め方も、東証プライム市場に上場する企業だと稟議が通りにくい場合があります。ですがおすすめなので、挑戦していただきたいです。


山中:
そうですね。弊社ではそれに加え、前編で少し話した「《課題×サービスの価値訴求の黄金パターン》を見つける」ということも大切にしています。新規事業のBtoB商品は潜在ニーズ寄りであることが多いので、ここの掛け合わせの黄金パターンを見つけてマーケティング施策を考えていくのが重要です。

実は、この黄金パターンが見つかってないまま進んでしまっているケースもあるんですよ。その場合は事業自体を見直した方が良いのです。このまま進めても、誰がどれだけ使ってくれるのか、不明瞭なケースですね。

弊社でも支援に入っていた新規事業で、冷静に顧客課題と提供価値、それにかかるコストと、当事者のやりたいことに向き合った結果、「止める」と事業撤退の判断をしたことがあります。止める意思決定は辛いものです。しかし、投資したけど効果が出ない結果になるくらいなら、早いうちに決めた方が良いです。ただ、当事者はやりたいから進めるわけですし、広告代理店などの外部支援者は、事業が進んだ方が広告費も上がるため収益が出ることが多い。沢山広告費を出稿してほしい方に目標の力学は働いてしまう。事業が進んだ方がメリット享受者が多いですし、本人に言いにくいのもあって「止めた方が良い」という人は少なくなりがちです。

また、外部の支援者は良かれと思って意見を言うけど、実際に責任を負うわけではないため、意外と適当なことも多いので注意してほしいです。ご自身の経験にのみ基づいていて、主観が強く、当事者の事業とゴールや背景が全く違うため、アドバイスに振り回されるということも多いです。

私も、いくつも事業を見てきましたが、全てチームやリソースが異なるため、ある程度共通項は見えてきても進むべきか撤退か、どうしたら良いのか、答えはどこまで行ってもわかりません。何か伝えることがある場合は、なるべく誠実に、理由や根拠を明確にしてお伝えするようにしています。

結局、本当に事業に向き合う当事者が最終意思決定を下すしかないわけですが、サンクコストを踏まえるとなかなか難しいのです。
そのため、例えば開始から3か月など、意思決定のタームを事前に決めておき、その判断に必要な情報をリサーチで集める。事前にそのスケジュールを確保することが組織やその人の人生を助ける上でも本当に大切なんです。


栗原:
確かに。よくあるのが、社長や役員の営業力や既存の営業網頼みで商品力が低いままローンチしてしまい、後からスケールしにくかったりするパターンです。

PMF(プロダクトマーケットフィット)と呼ばれる、商品が売れるようになる状態を指す概念がありますよね。まずはPMFを達成してから、本格的に事業に投資するのが大切です。PMFを確かめる前に営業・マーケティング投資を本格化しても、「穴の空いたバケツ」状態でお金が消えてしまいます。


山中:
PMF検証も外部支援者任せではいけないですね。先に述べたように、誰の意見を聞くにしても、どういう利害関係で動いているか、どんな責任を負っている上での発言かどうかは見極めないといけない。
どのような施策・データで検証するかの意思決定は責任者が行わないと怖いです。
前編で、事実・事象とその裏側の背景の両方から検証することが大事だというお話をしましたが、外部支援者の方がAという事象を伝えてきたのを鵜呑みにして事業を起こしたら、「実は背景が違ったのでBが事実だった」となり全然うまくいかなかった、ということになりかねません。

外部支援者さんを否定するわけではないのですが、意見をどの程度まで意思決定に加味するかという見極めは大切です。

BtoB商材の特性を理解した上で、有効な施策を選ぶ

司会:
実際に事業の立ち上げフェーズだと、どのようなマーケティング施策が有効なのでしょうか?商材の特徴に関わらずBtoBのサービスに共通して有効な施策があれば教えてください。


栗原:
先ほどお話ししたように、予算があるなら一旦全部やるのがまずおすすめですが…。

そうですね、BtoB商材の特徴を理解した上で施策を選ぶ視点でいくと、まずBtoBはBtoCに比べて高額商材であることが多いので、発注に対する不安感が高い傾向にあります。なのでセミナーやわかりやすいWebサイトなどの「ちゃんと説明する」マーケティング施策が有効です。

また、高額な商材を、知らない会社には発注しにくいので、会社や商品の認知度を上げるための展示会やマス広告などの施策も良いでしょう。

また、BtoB商材は顧客の購買タイミングをコントロールしにくく、タイミングキャッチ商材であることも多いです。この場合は、顧客が購買を検討するタイミングで商材が想起されるように、継続的なコミュニケーションが取りやすいメールマーケティングも有効です。

その他ですと、日本企業の場合は稟議のプロセスがあるので、稟議用の提案資料や営業資料を充実させると受注率が上がるケースが多いです。

立ち上げフェーズにおいて、コンテンツマーケやSEOはあまり役に立たない

司会:
先ほどの質問とは逆に、BtoBの新規事業を立ち上げたばかりのときにやらない方が良いマーケティング施策やその他があれば教えて下さい。

栗原:
わかりやすいところでいうと、コンテンツマーケティングはあまりおすすめしません。成果が出るまでに時間がかかりますし、成果のコントロールが難しいからです。広告だと予算を踏まえたCPAやコンバージョンの計算が可能なんですが、コンテンツマーケティングだと難しいじゃないですか。

また、知人に売るのも避けるべきですね。あまりにも効率が良すぎて他の施策をやる気がなくなりますし、下駄を履いた状態での受注になるため、真のプロダクト価値とか顧客の課題が何なのかというところがぼやけてしまいます。PMFを検証してプロダクトの価値や顧客理解ができてから知人に売るのは良いと思いますが、最初はやはり広告などのペイドメディアでリードを集めた方が良いと思います。


山中:
そうですね。最初に既存のつながりや代表のパワープレーで売ってしまったときに、そこを理解していたら良いのですが、「このサービスは価値があるから売れた」と捉えてしまうと結局全然スケールしませんでしたって話になりますよね。


栗原:
新規事業でのSEOもあまり意味のない施策です。皆さんSEOをすごく気にするんですが、新規事業はドメインが新しく、SEOでの評価が低くなりがちなので不利です。また、競合が多数存在するような既存市場での新規事業では検索キーワードが存在しますが、新しい領域の商材の場合、そもそも検索キーワードが存在しないか、存在しても1位を取ってインパクトがあるほどの検索ボリュームが見込めません。。


山中:
タイトルタグが何だ、サイトのディレクトリ構成が何だ、とか、被リンクをどう獲得しようだとの議論そのものが、基本的に無駄なわけですね。


栗原:
そうですね。まずはLPを作って広告を打って、展示会に出て、セミナーを開催して、しばらくしたらコンテンツマーケティングやSEOをやっていく、といった段取りを踏むのが良いかと思います。


山中:
勉強になりますね。今後も栗原さんのTwitterを拝見して勉強していきたいと思います。ありがとうございました。

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株式会社才流
表取締役社長

栗原 康太

株式会社才流  代表取締役社長

東京大学卒業。2011年にIT系上場企業に入社し、BtoBマーケティング支援事業を立ち上げ。事業部長、経営会議メンバーを歴任。「メソッドカンパニー」をビジョンに掲げる株式会社才流を設立し、代表取締役に就任。著書に『事例で学ぶ BtoBマーケティングの戦略と実践』(すばる舎)など。カンファレンスでの登壇、主要業界紙での執筆、取材実績多数。

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株式会社まーけっち
代表取締役社長

山中 思温

株式会社まーけっち 代表取締役社長/株式会社WEIN Group 最高人材責任者

上智大学外国語学部卒。 新卒でマーケティング企業に入社し、最年少で事業部を立ち上げ、アンケートアプリの若年層国内ナンバーワンを達成。顧客リサーチの課題を痛感し、当時の貯金の1000万円をすべて投じ、“株式会社まーけっち”を創業。 大手企業・国家機関・スタートアップなど100社以上の支援を行い、講演実績も多数。2021年より、WEIN GroupのCHRO(最高人材責任者)に就任。

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