コンテンツ制作者は“クイックウィン”で社内を巻きこめ【桜井貴斗氏×まこりーぬ氏 対談後編】

コンテンツ制作者は“クイックウィン”で社内を巻きこめ【桜井貴斗氏×まこりーぬ氏 対談後編】

マーケティングやブランディングを支援する【株式会社HONE 代表取締役 桜井 貴斗氏】と、LIGブログ編集長代理としてコンテンツマーケティングを実践する【株式会社LIG Marketer まこりーぬ氏】が対談する本企画。前編では、コンテンツマーケティングの前提や基本原則などについてお話しいただきました。
では、メディア運営やコンテンツ制作の現場において重要なポイントはなんでしょうか? 後編は中小企業も取り組みやすい記事コンテンツに焦点をしぼり、LIGブログの変遷、継続的に記事を更新するコツ、社内の巻きこみ方などについて、語りあってもらいました。

【前編はこちら】顧客に選ばれる必然性をつくる! ブランドの言語化こそ、コンテンツマーケティングのキーポイント

LIGオウンドメディアの成功・衰退・改革とは

司会:
オウンドメディアがよく知られる前から、LIGさんはブログで情報を発信されていましたよね。これまでの反響と変遷を教えてください。

まこりーぬ:
私たちは会社設立の2007年からLIGブログを続けています。注目を浴びたきっかけは、採用目的のおもしろ記事。「伝説のウェブデザイナー」と題して、当時の社長を首まで砂浜に埋めたんです(笑)。それがめちゃくちゃバズって、「おもしろい制作会社」という認知が広がりました。

それで勢いづいてエンタメ性の強いコンテンツをどんどん出すように。秒速結婚したり、部下の部屋を勝手に改造したり、経費でハワイに行ったり。現在でいうインフルエンサーのような社員が数名いて、「バズコンテンツの会社」みたいになりました。

桜井:
LIGさんはそのあたりのイメージが強いですね。

まこりーぬ:
最盛期は月間800万PVまで伸び、広告収益をあげるWebメディアへ成長しました。ただ、インフルエンサーの社員が辞めると、記事のPVも減っていく。私が入社した2018年には、ゆるやかな衰退期に入っていました。

桜井:
そこから、どうやって立て直したんですか?

まこりーぬ:
改革を始めたのは2021年です。外部コンサルの力も借りて、運営体制とルールを変えました。以前は全社員が毎月1本の記事を書くルールだったんですが、提出率は約20%。テーマは自由だったので、プライベートに寄った記事もありました。

そこで記事のテーマを「自分が業務を通じて学んだこと」にしぼり、提出頻度を2か月に1本へ減らし、記事の提出は全社員必須であることを改めて経営陣から繰り返し伝えたんです。その結果、良い記事が増え、提出率も100%まで上がりました。

桜井:
無理のないマネジメントとオペレーションですね。

まこりーぬ:
その時期にLIGの事業モデルも変わりました。ざっくりいえば、制作会社からDX支援の会社へ。となると、マーケティングやWeb制作の記事ばかりじゃバランスが悪くなります。そこで私たち編集部が主導して、社員を巻きこむカタチに変えました。編集部と各事業部の責任者が話しあい、ターゲット顧客に役立つ企画を考え、必要なメンバーをアサインするという、いわゆる一般的な編集部になったわけです。

桜井:
それは強い組織ですよ。当たり前のようですが、多くの会社ではそれがなかなかできないんですよね。忙しくて記事制作が続かなかったり、変な意思決定が入って方向性がブレたりしますから。

まこりーぬ:
確かにそうですよね。LIGは経営者の理解があり、編集専任のメンバーもいるので、ブレずに続けられるていると思います。

自社が勝てるポジションをつくり、記事のテーマを洗い出す

まこりーぬ:
HONEさんでは、どのように記事をつくっているんですか?

桜井:
基本的なマーケティング戦略にそって、顧客のエンドユーザーやエンドクライアントが求める情報を整理します。そして「顧客」「競合」「自社」の3Cを分析して、その企業が勝てる独自のポジションをつくるようにしています。そこからコンテンツ化できるテーマを洗い出すんです。

具体例として、過去に僕がBtoBの中小企業を支援した事例があります。機械メーカーのイシダテックさんですが、この会社はプロジェクト管理ツールを活用して、大掃除を徹底的に行っていました。たとえば、エリアごとの完了要件を定めて、各社員の担当を振り分ける。処分の判別が難しいモノはスマホで撮影して、社内のグループチャットで随時確認していたんです。

まこりーぬ:
徹底してますね。

桜井:
もはや凡事徹底のレベルを超えています(笑)。そこで「凡事/珍事」「構想/実行」の4象限を設定し、「珍事実行」のポジションで記事を企画しました。記事を書くために大掃除を徹底したわけじゃありません。毎年やっていたことが自社の強みになると気づき、それをnoteで発信したんです。(記事はコチラ

ほかの「珍事実行」としては、IKEAの家具で古い事務所をリノベーションしたこともありました。ただの模様替えではなく、社長がレイアウトの企画書をつくり、電気のスイッチやコンセントの色まで細かく決めました。それをnoteの記事にして、スウェーデン語に翻訳したものをIKEAのカスタマーセンターに送ったんです。「これほどIKEAを愛しています!」みたいなメールで(笑)。(記事はコチラ

まこりーぬ:
スゴいですね。

桜井:
フツーはしないですよね? そんな、独自の立ち位置からコンテンツを発信し続けた結果、「こんな発想の企業と仕事がしたい」といった引き合いが生まれてきたんです。

SNSの反応やPV数の増加を共有し、社内を盛り上げる

司会:
LIGさんのような編集部がない企業の場合、コンテンツを発信し続けることに苦労すると思います。継続的に記事を更新するためのコツを教えてください。

桜井:
まずは社内の担当と役割を決めることです。仮に「Aさんは毎週1本」「Bさんは隔週1本」と記事の提出頻度を決めたら、そのルールを必ず守ってもらう。担当者がひとりなら、週1本が限度でしょうね。

僕が支援する際は、あらかじめ約3か月分のアウトラインを作成します。記事のテーマとタイトルさえ先に決めておけば、執筆はなんとかなる。最後は気合いです!

まこりーぬ:
ルールの徹底は大事ですよね。一時期、私も締切をリマインドする女になっていました。「この日までに出してください!」と社内に連絡しまくって。そのせいで、めちゃくちゃイキっている人だと同僚に誤解されましたよ(笑)。

桜井:
とても大事ですね!期限を守らないことから組織の衰退につながることもあります。あとは、記事に対する反応を見える化しています。ファンができると、担当者がやる気になりますから。

まこりーぬ:
わかります!コンテンツマーケティングって、記事を1本出したから売上が急増するわけじゃない。コツコツ積み上げる必要があるので、ほっとくと現場のテンションが下がっていくんです。

だから、ウチはKPIを細かく分解して、小さな成果でも喜ぶようにしています。SNSの反応、PV数の増加などを定期的に社内で共有して、「このメディアは前進している」といった勢いをつくる。1件でも問い合わせが来たら、「やっぱあってたわ。キテル!キテル!」と自分とチームを鼓舞しています。

桜井:
同感です。成果が出たら、一緒に喜ぶ。一方で執念も必要で、ちょっとPVが伸びなくても少しガマンして、続けてほしいと思いますね。

まこりーぬ:
私も社内の協力を得るために、執念で喰らいついています。もちろん協力的な人がほとんどですが、そうじゃない人もいますからね。「これ意味あるの?」みたいな。提案した企画を突き返されたら、修正して再度持っていくようにしています。すると、「コイツがんばってるから、仕方なくつきあうか」みたいな空気に変わるんです。まわりを巻きこむには、個人の熱量も必要ですね。

桜井:
そうですね。社内外を問わず、協力者は多いほうが良い。特にひとり担当者は孤独なので、取材に応じてくれる人、ネタを提供してくれる人を増やすのが大切です。手軽な方法は、他社のマーケ担当や広報担当とTwitterでつながること。“中の人”同士で情報を交換するだけでも、大きなチカラになります。

司会:
最後に、記事コンテンツを企画・制作しているマーケティング担当者に対して、アドバイスをお願いします。

まこりーぬ:
誰よりも自分自身が楽しまないと続きません。だから、コンテンツの可能性を信じて、自分がおもしろいと思うものをつくってください。その姿勢があれば、良い記事ができるし、良い結果にもつながるはずです!

桜井:
近いんですが、オタクになるのが大事だと思います。つまり、好きな気持ちを突き詰める。ビジネスでやると、内容の浅さを見透かされてしまいます。

また「トレンドを押さえれば売れる」と勘違いしている人がいますが、マーケティングに魔法の杖はありません。なので、楽しみながらコツコツ続けるしかない。そこにマインドセットすれば、きっと気が楽になるはずです。

【前編はこちら】顧客に選ばれる必然性をつくる! ブランドの言語化こそ、コンテンツマーケティングのキーポイント

自社の魅力を発信するコンテンツとは何か?マーケティングやブランディングを支援する【株式会社HONE 代表取締役 桜井 貴斗氏】と、LIGブログ編集長代理としてコンテンツマーケティングを実践する【株式会社LIG Marketer まこりーぬ氏】に対談いただきました。

監修者画像

株式会社HONE
代表取締役

桜井 貴斗

大手求人メディア会社の営業職を務めた後、複数の新規事業の立ち上げを経て、2021年に株式会社HONEを設立。「地方に骨のあるマーケティングを。」を理念に掲げ、企業が定めた目的へ向けて「誰に/何を/どのように」届けるのか、対象や手法を明確化したマーケティングやブランディング戦略を提案。地元の静岡を拠点に、地方Webマーケターのためのコミュニティ運営などを手掛けている。
Twitter : @LOCAMA_AT

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株式会社LIG
Digital Marketing / Manager / Marketer

齊藤 麻子(まこりーぬ)

採用コンサルティング会社へ新卒入社。法人営業から新規事業推進、マーケティング業務に従事したのち、2018年に株式会社LIGへ入社。「顧客のマーケティング支援、自社のマーケティング、オウンドメディア運営」などとマーケターにとどまることなくライターとしても活動。2021年にLIGブログ編集長代理、デジタルマーケティング事業部マネージャーに就任。
Twitter:@makosaito214

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