具体例から学ぶすぐに取り入れられるメルマガの重要ポイントとメールマーケティングの未来【室谷 良平氏×安藤 健作氏 対談後編】

具体例から学ぶすぐに取り入れられるメルマガの重要ポイントとメールマーケティングの未来【室谷 良平氏×安藤 健作氏 対談後編】

メルマガを効果的に運用しながら顧客とコミュニケーションをとり、コンバージョンへと導く「メールマーケティング」において、実際に顧客に行動を起こしてもらうための秘訣は何か。
デジタルマーケティングで高い実績を残す2社、【株式会社ホットリンク マーケティング本部長 室谷良平氏】と【株式会社WACUL 執行役員CMO 安藤健作氏】のおふたりに、メルマガを上手に活用したメールマーケティングの成功の秘訣や運用方法などについてお話しいただく企画です。
対談後編では、実際に配信された数社のメルマガをサンプルに、おふたりの独自の視点による“添削”を依頼。GOODな事例とBADな事例に分けて、メルマガを作成していく上で注意すべきポイントについて聞きました。

【前編はこちら】「メールマーケティング」の陥りやすい罠と成果を出すために知っておきたい定石。

最も伝えたい情報をページの最上位に配置するのはメルマガの鉄則

司会:
前編ではメルマガを活用したマーケティングのポイントについてうかがいましたが、実際にいくつかのメルマガをサンプルに、おふたりに添削していただきたいと思います。まずはBADな事例から。画像がたくさん挿入されている小売関連A社のメルマガをご覧になっていかがですか?

安藤:
まず気になったのが、件名とFromアドレスの内容がかぶっている点ですね。両方にA社の略称が入っていますが、Fromに入っているのであれば、件名には不要です。また、画像の数がやたら多過ぎて、メインキャッチに関する情報がずっと下のほうに置かれているのも疑問。最も伝えたい情報を最上位に配置するのは鉄則で、その順番が混同しちゃっているので、何が言いたいのか分からないんですよ。

室谷:
なかなか手厳しい(笑) 次の音楽関連のB社はいかがでしょう?カラフルなポップが印象的ですが、文字などの要素が小さ過ぎてよく分からないと感じます。さらに、メルマガ自体が長いので、すべてを見るにはかなりスクロールしないといけないですね。

安藤:
これも、件名に入れた文言が出てくるのがずいぶん下なんです。ファーストビューに入ってないと、件名と中身が違うじゃないかって、読者が離脱してしまうんですよ。

スマホって、メルマガ内のCTAをクリックしたら、ブラウザに飛んでしまって、もうメールには戻ってこないんですね。一番上に余計なCTAを置いていて、それを押されてしまうと、もう他は見てもらえなくなる。そして、クリック率は画面の下に行くほど減っていきます。最もクリックして欲しいものが最上位にないのは非常にまずいパターンですね。

室谷:
次のアミューズメント系C社のメルマガはいかがでしょうか?これって、Fromに差出人名が設定されていないですね。メールアドレスそのままの状態です。

安藤:
社名もしくはブランド名をちゃんと入れれば良いのに、これではどこから来たメルマガか分からないままで終わってしまいます。せっかく浸透した社名があるのに、わざわざ誰も知らないサービス名を入れてしまうのはよくある落とし穴で、本来の名前を入れるだけで開封率は上がると思います。

室谷:
どのメールソフトでも、最初に目につくのはfromアドレスですもんね。だからすごく重要なのに、ないがしろにされていることが多いのは残念です。

安藤:
それとね、多くのメルマガを見て気づくんですが、画面の最後に「このメールは送信専用のため返信は不可」、つまりは「No Reply」の表示があるでしょう。これって何の意味があるのか?といつも思います。せっかく顧客とコミュニケーションできる機会なのに、自らそれを拒絶してるのはもったいないな…と思います。

あともうひとつ、まれに送信者情報の表示と購読解除の導線、さらに問い合わせ先がもれているメルマガを目にすることがあります。これって、「特定電子メール法違反」なんですよ。

室谷:
知らない人って意外に多いんですよね。

安藤:
そうなんです。そんなに難しい話じゃなくて、決まり事は大きく3つ。メルマガを送る際は必ず事前に許諾を取ること、購読解除した人には送ってはいけないこと、そして送信者情報の表示義務の3つです。違反すれば、企業への罰則のほかに、送った人も罪に問われることになるので注意すべき。メルマガ担当者は必ず知っておかなければならない事柄ですね。

視聴履歴に紐づいて提案する、パーソナライズされたメールは価値が高い

司会:
次にGOOD事例はいかがでしょうか。最初に外資系映像配信関連のD社です。

安藤:
載せているコンテンツが1個と非常にシンプルで、言いたいことがストレートに伝わる点が良いと思います。また、海外と日本のメルマガの違いって、フレンドリーさなんですね。相手の名前を入れて、「ハーイ! ○○さん!」と親しみを込めて呼びかける。ただ、日本では「よう!」なんてなかなか送れませんから、真似はできないと思うんですが(笑)

そして、このメルマガが秀逸なのは、受け取る人の視聴履歴に紐づいた商材を提案している点です。やはり、パーソナライズされたメールというのは価値が高い。読者が欲しい情報とコンテンツが一致している点でとても優れていますね。

室谷:
私も経験がありますが、ウェビナーを視聴した内容に紐づけられたものだったり、展示会で興味を持って見たものに関する情報が届くと、有益だなって思います。…次のシンプルな外資系アパレルE社のメルマガはどのあたりが良いですか?

安藤:
これも件名が短く、簡潔に内容が伝わってきますね。結局、海外のメルマガはカタチがとてもシンプルなんですよ。“1通のメールには1コンテンツ”が徹底されています。

室谷:
その上で、5つの商品カテゴリーに分けて間口を広くして、クリックした人をWebサイトに流入する作りにしているのも秀逸ではないですか?

安藤:
おっしゃる通りです。たとえばスカートの写真を1枚載せて、それをクリックしたらその購入ページに行くのは実は間違いなんですね。それだとそのスカートしか買わないけれど、他の商品も含んだ一覧ページに飛べば他の購買効果も高まります。

室谷:
次の、図表が載っているWebマーケティング会社のF社のメルマガなのですが、私は好きでよく読むんです。というのも、ブログにリンクで飛ばすことをせず、メルマガの中で情報を完結させる。実は、ユーザーにとってワンクリックは面倒に思われがちなんです。無理にリンクさせてブログのPV数を追うのではなく、メルマガ接点でのナーチャリングしていく手法として上手な構成じゃないかと思います。

安藤:
なるほど。加えて、メッセージを伝える人の顔写真を入れているのが良いですね。顔写真が入っていると情報の信ぴょう性が高まり、親近感が湧くこともあって反応が良くなるんですよ。

室谷:
最後に、商品がたくさん掲載されている大手アパレルH社のメルマガですが、これって訴求のタイミングが実に絶妙なんです。この秋、東京の気温が一気に下がったときに、「急に寒くなりましたね…」という件名で届きました。寒くなって、誰もが欲しい情報であり、抜群のタイミングと提案内容、そして抜群の件名だと思いました。

安藤:
ちなみに、このH社の年間のメルマガ配信数を数えてみました。すると年間で約280通と、ほぼ毎日出している感覚です。LINEも併用しつつ、実に効果的なメールマーケティングを行っているんですよ。即時性の高いLINEと、親和性を高めるメルマガ。双方の強みを活かして役割を分けつつ、成果を上げていますね。

今後は、効果が出続けるものとそうでないものの二極化が進むのでは?

司会:
メルマガに関して、正直「もう古いのでは?」などと感じている方もいるのではと思うのですが、今後のメールマーケティングはどうなっていくと考えますか?

室谷:
メールアドレスって、今のWebにおいて不可欠の要素ですし、欠かせないIDです。環境に相当大きな変化がないかぎり、それは残り続けると思います。とくにBtoBマーケティングにおいては、メールを軸にした施策はまだまだ効果が高いと考えています。

安藤:
私もメールの優位性は高いと思っていて、とくに3つの強みがあると考えます。ひとつは室谷さんが言ったように、誰でも持っているという点です。ふたつめは、効果が持続的であることです。メールはTwitterなどと違って、メールボックスにストックされますから容易に再読が可能なんですね。そして3つめは…?

室谷:
本人がオプトイン(送信依頼)していることでしょうか。基本的には、自分から望んでメルマガ登録をしてくれているわけですから。

安藤:
そうですね。つまり、欲しいと思っている人に、欲しい情報を届けている。だからこそ、読んでくれた人が態度変容を起こしやすいという効果はあると思うんです。そしてBtoBの場合、コミュニケーションの96%はメールで行われていて、メールアドレスの発行数はまだまだ世界で伸び続けています。メールマーケティングはBtoBの企業が参入したのはそれほど昔の話ではないことも含め、これからも積極的に取り組んだほうが良いと思います。

ただ、おのずと競合は増えていくので、今後は効果が出続けるところとそうでないところの二極化が進むのでは?と思います。そして前者になることは、メルマガのことをきちんと学べば誰でも可能であるとぜひ知ってほしいですね。

室谷:
メールアドレスはLINEやSNSのDMなどに比べ、良い意味で距離感が遠いから渡しやすい。そしてBtoBの商習慣のなかでメールは必ず残っていくものだと思うので、最初のコミュニケーションとして欠かせないものです。…だからメルマガは、企業から企業へ最初に贈る「ラブレター」と呼べるのではないでしょうか。その先にいる人を思い浮かべて発信していけば、効果も上がっていくと思いますね。

【前編】「メールマーケティング」の陥りやすい罠と成果を出すために知っておきたい定石。

メールを用いて顧客とコミュニケーションをとり、最終的にコンバージョンへと導く「メールマーケティング」。昔からある手法だからこそ、情報量が多過ぎて重要なポイントがわかりづらくなっている感もあります。そこで今回、メールマーケティング成功の秘訣や運用方法、メールコンテンツの作成方法、陥りやすい落とし穴などについて、【株式会社ホットリンク マーケティング本部長 室谷良平氏】と、【株式会社WACUL 執行役員CMO 安藤健作氏】に対談いただきました。

監修者画像

株式会社ホットリンク マーケティング本部長

室谷 良平

函館高専情報工学科卒。オリンパスメディカルシステムズの技術職からキャリアスタート。その後、ベンチャー数社のマーケティング職を経て、2019年にホットリンクに入社。
ホットリンクでは、BtoBマーケティング・ブランディング・広報・インサイドセールスを統括。企業のSNSマーケティングを支援すべく、SNS活用のメソッド開発やコンサルティングにも従事。著書に『1億人のSNSマーケティング』『現場のプロが教える!BtoBマーケティングの基礎知識』がある。Twitterやニュースレター(https://rmuroya.theletter.jp)でもマーケティング情報を発信中。
Twitter:@rmuroya

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株式会社WACUL 執行役員CMO

安藤 健作

早稲田大学卒業後、株式会社丸井を経て、2006年に株式会社ラクスに入社。同社にてCS組織の立ち上げを行ったのち、マーケティングマネージャへ。その後、2016年よりメールマーケティングサービス「配配メール」の事業責任者となる。メールマーケティングのエバンジェリストとして活動し、多数のメディア取材を受ける。2022年「現場のプロが教える!BtoBマーケティングの基礎知識」(マイナビ出版/共著)を出版。2022年7月よりWACULにジョイン。​
Twitter:@comune1128

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